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第30回東北眼疾患病態研究会のご案内

特別講演

網膜視細胞変性の分子基盤の解明を目指して—マイクログリアの役割とその治療標的としての可能性—

東京大学医科学研究所 再生基礎医科学研究部門

特任教授 渡辺 すみ子先生

日 時 : 2016年4月11日(月)19:00~20:15

場 所 : 艮陵会館 大会議室

会 費 : 1,000円

抄録

私達の研究グループは、網膜発生、そして視細胞変性について分子基盤を明らかにし、治療標的の同定につなげたいと考えている。特に網膜細胞の系列特異的な分子基盤を明らかにするため、セルソーターで分離/精製した網膜細胞の遺伝子発現、epigenetic変化を解析し、細胞系列特異的分子機構が、網膜の発生、維持における細胞間の協調に果たす役割を検討してきた。近年、こうした機構の破綻である網膜変性について視細胞変性を軸に研究を展開している。このため、タモキシフェンの投与により視細胞変性が起こるマウスモデルを作成し、視細胞変性の初期からの病態の進展に伴った分子基盤の変化の解析が可能になった。このシステムを用いてマイクログリアの視細胞変性における役割に着目している。マイクログリアはマクロファージと類似した細胞であるが、その発生過程、分布は大きく異なっている。マイクログリアは脳神経、網膜内に常在し、不要物の除去を行っていると想像されるが、組織の非常時には活性化され増殖、移動し、貪食のみならず様々なサイトカインを放出するなどし、病態の進展を修飾する。しかし、炎症性のサイトカインの放出などが、必ずしも病態の沈静化に役立っているかは議論がある。近年、アルツハイマー、躁鬱病、パーキンソン病などの脳神経の重篤な疾患において、マイクログリアがその病態進展の憎悪に寄与している可能性が指摘され、米国を中心に活発な研究が進んでいる。私達は網膜内にも存在し、視細胞変性時には活性化されるマイクログリアの網膜変性時の役割や分子基盤について、マイクログリアの制御が治療戦略の一助としての標的となりうる可能性を仮定して検討しているのでご紹介したい。

 

2016.04.08| 研究会